活動報告

私たち東京武蔵野中央ロータリークラブは、さまざまな職業のメンバーが
その経験と知識を生かして社会奉仕活動や人道的活動に取り組んでいます。

「オープン例会/「日本を取り巻く安全保障環境と航空自衛隊」(2025/11/20)

卓話

「日本を取り巻く安全保障環境と航空自衛隊」

航空自衛隊幹部学校副校長 空将補 金野浩子さん

〇略歴:平成8年に女性第1期生として防衛大学校を卒業。任官後は航空機整備部門を専門とする幹部として、第2航空団(千歳)での勤務を起点に、第1航空団修理隊長(浜松)や第9航空団整備補給群司令(那覇)を歴任。また、幹部学校や防衛研究所で学ぶとともに、航空幕僚監部において主として人事制度や人材育成等に係る業務に従事。令和5年から約1年半、航空気象群司令兼ねて府中基地司令として勤務し、現職。特に、防大女性1期生としての矜持と3人の子育てを両立してきた経験等を活かし、航空自衛隊における人的基盤の強化施策の推進や後輩育成に尽力してきた。

【日本を取り巻く安全保障環境】

わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なものとなっています。特に、インド太平洋地域は、安全保障上の課題が多い地域であり、核兵器を含む大規模な軍事力を有し、普遍的価値やそれに基づく政治・経済体制を共有しない国家や地域が複数存在しています。また、歴史的な経緯を背景とする外交関係などが複雑に絡み合う地域でもあります。近年では、東シナ海、南シナ海などにおける一方的な現状変更の試み、海賊、テロ、大量破壊兵器の拡散、自然災害などの様々な種類と烈度の脅威や課題が存在しています。

日本の空を見てみると、年々中国機やロシア機の活動範囲が広がり、活動量も増加しています。航空自衛隊は、日本周辺における中国機やロシア機に対し、毎年およそ700回を超 える緊急発進をしています。

宇宙を見てみると、近年地球観測や通信を目的とした数百~数万機規模の衛星コンステレーションの構築が進んでおり、宇宙物体の合計数は約2.8万個を超えています。特に、中国による衛星打ち上げの増加は顕著であるとともに、宇宙利用を妨げる対衛星兵器も開発され、中国とロシアによる衛星破壊(ASAT)実験のほか、GPSに対する妨害や宇宙システムへのサイバー攻撃など、宇宙領域における脅威が増大しています。 通信、測位、気象等の宇宙システムは、経済や社会活動において重要なインフラであるとともに、陸上、海上、航空、統合のすべての作戦において、指揮統制や装備品等の能力の最大発揮に不可欠であり、宇宙空間の安定的利用の確保のための取り組みが不可欠となっています。

国別で見ると、中国は国防費を急速に増加させ、軍事力の質・量を広範かつ急速に強化し、尖閣諸島周辺を含む東シナ海や太平洋などでの活動を活発化させています。北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの増強に集中的に取り組み、弾道ミサイルなどの発射を強行しています。ロシアはウクライナ侵略を継続しつつも、我が国周辺において新型装備の導入を進め、大規模な演習を行うなど活動を活発化させるとともに、中国との共同飛行や軍事演習などを継続的に行い、軍事的な連携を着実に強化しています。

【航空自衛隊の活動】

航空自衛隊は、平時有事を問わず、唯一日本の空と宇宙を守る存在であり、24時間365日、日本の空の警戒監視を行い、戦闘機が常に5分で緊急発進できる態勢を維持しています。

近年、中国及びロシア軍機の活発な活動に対し毎年700回ほどの緊急発進を実施するとともに、弾道ミサイルに対処するため態勢、国際緊急援助活動や緊急事態に際して邦人等を保護するための輸送を行うための態勢、国内の災害等に際して速やかに航空機や部隊を派遣できる態勢を維持しています。

更に、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているとの認識の下、2022年に策定された防衛三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の元、航空自衛隊は、各種機能の強化に努めています。

特に、令和2年航空自衛隊府中基地に発足した宇宙作戦群は、その役割を強化するために、今年度末に宇宙作戦団に、令和8年度には宇宙作戦集団として新編され、同年に航空自衛隊は航空宇宙自衛隊に進化します。

【航空自衛隊の隊員】

航空自衛隊の隊員は、全国各地、様々な場所、様々な環境で、様々な職務に従事しています。航空自衛隊は、細分化された機能を組織的に発揮することで、初めて任務が遂行できることから、隊員一人一人が教育や訓練を通じて成長していくことが重要です。

隊員個々を見ると、性別も年齢も、家族構成も、家庭環境も、趣味も、価値観も様々で、まさに多様な「個」の集まりです。このため、一人一人を「個」として尊重しつつ、職務を通じて成長できる機会を作為し、活躍の幅と深さを広げ、やりがいをもって勤務できる環境の整備を追及しています。

また、自衛隊員の募集対象者は右肩下がりに減少しており、自衛官の募集は大変厳しい状況にありますが、隊員一人一人が広報官として自衛官の募集に力を入れるとともに、業務の見直しによる効率化、部外力やOBの活用や、定年年齢の延長、再任用制度の充実など、様々な施策により人的戦力の最適化を推進して います。